2013年6月15日土曜日

ワインと食事のマリアージュを探究する会(テーマ:ワインとスパイス) 2013年6月

  
毎月恒例の「ワインと料理のマリアージュを探究する会」。今回のテーマではワイン5とスパイスの相性をみる。白ワイン2種類に料理が2種類、赤ワイン3種類に対して料理は4種類。スタッフの方がを含めて参加者は11名。いつも通り、点数は前回と同じく5段階評価にして、ワインと食材が喧嘩しなければ平均値の3点として採点する。

まずは白ワイン2種類のひと言テイスティングノート。①シャルドネ ②リースリング

  
①Jean Fournier Marsannay Blanc Cuvee Saint Urbain 2011(ジャン・フルニエ マルサネ・ブラン キュヴェ・サン・チュルバン)
硬質なミネラルが張り、チョークが加わる香り。果実味はすぅっとして洗練された薄い層状になっている味わい。

  
Bioweingut Lorenz Riesling 2011(ビオヴァイングット・ロレンツ リースリング)
奥底に強さを持つ香りと上層には大型の花が軽やかに香る。果実の甘味がボリュームを持ち、酸がピカピカと瞬き、それらに苦味が寄り添う。ヴィンテージは変わらないがロットが変わったそうで、まだ一体感やこの銘柄の特徴である果実のトロミが少なめ。

次に、白ワイン2種類をスパイスを効かせた料理と合わせる。

  
・キュウリとトマトのサラダ
スパイスはクミンとコリアンダー。スパイスの特徴でもあるが、クミンははっきりと効いていて、コリアンダーはやや控えめの効き方。
①シャルドネと合わせると玉葱が強くクミンは弱くなり、後半に辛味が出る。全体としてワインに厚みを持たせる(5点)。スパイスの清涼感が強調される(平野さん4.5点)。普通に合い印象なし(SK3点)
②リースリングはワインの甘さが料理をオブラートで覆い、後半にならないとスパイスが出てこない(3点)。スパイスとワインが少し喧嘩する(平野さん3点)。リースリングの酸味とコリアンダーの風味は悪くない(SK4点)

  
・レンズマメのサラダ
スパイスはクミン、コリアンダー、ジンジャー、ブラックペッパー、カイエンペッパー、カレー粉。ジンジャーと胡椒は弱めでその他はばっちり効いている。
①シャルドネと合わせるとコリアンダーとカレー粉が軸となり中央がしっかりとした山状に味が強調される。いいバランス(5点)。意外と喧嘩しない(平野さん3.5点)。シャルドネの辛さとカレー粉が合う(SK4点)。よく合う(KD4点)。無理のない組み合わせ(HK4点)。
②リースリングは酸がパァーっと浮き上がり、レンズマメの豆が低域にもあっとある。後半になるとレンズマメがある低層の上面にスパイスが小波を打つように出てくる。2層になる感覚がおもしろい(4点)。スパイスをワインが洗い流す(平野さん3.5点)。あえて合わせなくても(KD2点)。カレー粉が合う(SK3.5点)。ややぼやける(HK3点)

続いて赤ワイン3種類のひと言テイスティングノート。

  
③Domaine du Murinais Crozes-Hermitage Les Amandiers 2010(ドメーヌ・デュ・ミュリ クローズ・エルミタージュ・レ・ザマンディエール)
おもしろい特徴のある香り。豆を煮出したような香りがモワンとした軸となり、香水やヨーグルトも香る。味わいにシラーらしいスパイシーさもある。シラー100%。

  
④Le Clos du Caillou Clos du Caillou Cotes du RhÔne Bouquet des Garrigues(ドメーヌ・ル・クロ・デュ・カイユ クロ・デュ・カイユ コート・デュローヌ ブーケ・デ・ガリーグ)
明るい香りにセメダインも少し香る。1点からプワーっと味わいが全方向に広がり、ふわんとしながらも落ち着きがある。グルナッシュ85%、シラー10%、サンソー・カリニャン・ムールヴェドルが合計5%。

  
⑤Jean Fournier Marsannay Rouge Les Longeroies 2010(ジャン・フルニエ マルサネ・ルージュ レ・ロンジェロワ)
花束のように清楚な花がとてもきれいに香る。そのブーケにはスパイスと黄色い花が加わる。香りが1点から湧き出てくるように安定していてクリア。味わいはスッと口に入ってきた後に旨味が付いてくる。フレッシュなフランボワーズが特徴。

  

  
・サバポテト
スパイスは山椒。鯖とポテトを揚げたものに山椒を振りかけたもの。鯖がふっくらとしてとてもおいしい。塩が効いていて、山椒は上品に香る。ネーミングがいい。名前だけでも流行りそう。
③シラーはワインのスパイシーさの青い部分と薬っぽさが表に出てくる。この風味はシラーっぽいとも言えるが好きな成分ではない(2点)。山椒とシラーがよくマッチする(HK5点)。スパイスとシラーのスパイス味が合う(SK5点)。
④グルナッシュは料理単体では感じない鯖の臭みが一瞬出る。それ以降は鼻に抜ける香りや風味はいい(3点)。グルナッシュが重くなる(平野さん4点)。悪くないが積極的に合うと言えない(HK3点)。鯖の後味とワインの味があった(SK4点)。
⑤ピノ・ノワールは鯖とワインに一体感があり、ワインの酸味が平面状に広がり、後半に山椒が香ってくる流れがきれい(5点)。いたりアンパセリを一緒に食べるとさらにおいしい(4.5点)。料理自体の素材がよくその味と合う(SK4点)。
※ほぼ同じ傾向だが横浜基点の③シラーだけ皆と逆の点数付け。

  
・茄子のターメリック焼き
スパイスはターメリック。焼き茄子がトロっとして甘い。焦げた風味と香りがいい。
③シラーはワインのスパイスと黒い感じが焦げの風味と同一系統。タンニンが強めになり、タンニンと酸味が分離する(2点)。タンニンが強調される(平野さん2.5点)。タンニンが強くなるが悪くない(KD3点)。微妙にすれ違う感じ(HK3点)。タンニンが立って苦味が引き立つ。(SK3.5点)。
④グルナッシュは食材の味わいが舌に薄くねっとりとへばりつき、ワインの味はは上方へ突き上げる。タンニンが強調される(3点)。喧嘩しない(平野さん3.5点)。料理の味わいをグルナッシュが包む感じ(HK4点)。あまり個性を感じないグルナッシュが立っている(SK4.5点)。
⑤ピノ・ノワールは全体の味わいではワインに茄子の甘味が加わり旨味が増える。タンニンとワインの味が2分する。茄子との相性は4点だがスパイスとは2点(2点)。ピノのタンニンが強調される。他の要素が消える(平野さん2.5点)。微妙にすれ違う感じ(HK3点)。ピノの風味が引き立つ(4.5点)。
※オフセットしているがほとんど同じ傾向

  
・ケバブ
スパイスはクミン、パプリカ、ブラックペッパー、カイエンペッパー、コリアンダー、ジンジャー。羊肉がしっかりしている。
③シラーと合わせるとグーっという力強い味わいが押しのけてやってくる。クミンが強調される(3点)。シラーがパワフルになる(平野さん4点)。苦味が消えて武道の香りが広がる(SK4.5点)。
④グルナッシュと合わせるとクミンがグーンと立ち、酸味が薄い層で現れる。果実味が料理と一体になる(5点)。ワインが複雑になりよく合う(4点)。もっとも自然にマッチする(HK5点)。料理と合わせると丁度よくなる(SK5点)。
⑤ピノ・ノワールはクミン、カイエンペッパー、コリアンダーの順番にスパイスの風味がやってくる(4点)。ワインが少し分離する印象(平野さん3.5点)。上品に合う感じ(HK4点)。スパイスの香りが広がる(4.8点)。
※ややばらつきはあるがほぼ同じ傾向

  
・豚の角煮
スパイスは八角と豆豉(トウチ)、シナモン。赤ワインと八角がばっちり効いているのでグリューワインのような風味。
③シラーと合わせると、シラーの甘味がうまく全体をまとめて一体感がすごい。おいしい(5点で1位)。シラーのスパイシーな風味が強調される(平野さん4.8点)。食事と合う(SK5点)。
④グルナッシュは酸味と果実味がうまく全体をまとめる(5点)。グルナッシュが艶やかになる(平野さん5点)。赤ワイン3種類のうちではマッチ感が少なくグルナッシュがべったり感じられる(HK3.5点)。角煮の甘さが引き立つ(SK4.5点)。
⑤ピノ・ノワールは角煮の味わいの要素の中間を補うような感じになる。ワインが主張する。スパイスとの相性はよい(5点)。ピノのエキゾチックな風味が強く出る(平野さん4.5点)。両者の共通項が手を結ぶ(HK4.5点)。ピノが引き立つ(SK5点)。
※すべてのワインに対してかなり点数が高い。

  
Bioweingut Lorenz Wachgeküsst Secco Rosé(ビオヴァイングット・ロレンツ ヴァッハゲクスト セッコ・ロゼ)
スイカなど瓜系が香る。甘味があって軽い。洋ナシの風味もある。ケバブとは相性よくないが、鯖とは合う。

  
・Château Potensac 1993(シャトー・ポタンサック)
樽の香りが効いている。ショコラ、黒いが軽く、香水にクモリと黒さを含む。ミントもあるのでチョコミントの香りにもなっている。香りの要素が多く、カベルネ・ソーヴィニヨンらしいスーッとする感じもある。口に含むとスーッとしてボリュームもあるが訴えてくるわけではなく、すっきりして口側面に旨味がやさしく、舌先には黒い果実がのる。全体としてピシッとは締まらない。レンズマメとのもっさりした感じが似ている。

  
Domaine Geantet-Pansiot Bourgogne Pinot Fin(ジャンテ・パンショ)
混沌とした香りと味わい。

  
・Claude Dugat Bourgogne Rouge 2010(クロード・デュガ ブルゴーニュ・ルージュ)
嗅いだ瞬間からミルキーさが出る香り。ほわんとして中央から訴えてくる香りで獣臭もある。口に含むと2cmぐらいの球体が薄い骨格となり、そこから6cmぐらいの大きさまで球体状に味わいが伝播する。薄い骨格は動かない。味わいは梅、シソが柔らかくやさしくふぁーッと広がり、エレガントさを強く主張する。

  
・アサリのパスタ。
ペペロンチーノがベースとなったアサリの味わいがしっかりしたアサリのパスタ。

  
・Domaine Leroy Bourgogne Aligote 2009(ドメーヌ・ルロワ ブルゴーニュ・アリゴテ)
早く開けたときにのルロワらしい混沌として硫黄も含むもわんとした香り。味わいはレモンや蜂蜜、果実味がすっきりとあり、蜂蜜レモンのような感じもある。すっきりしているが厚みも程よくあり、現状の香りだけからは想像できない澄んだ味わい。

  
ダイヤモンド酒造 最際 甲州 2009(Sai-Sai koshu)
柔らかいグレープフルーツの酸味と果実味がフレッシュな味わい。酸味が平面にすっきり澄んだ構造になっており、ブルゴーニュに通じる味わい。甲州種独特の苦味もない。生産数500本程度

  
ダイヤモンド酒造 最際 ますかっと・ベリーA 2008(Sai-Sai Muscat Bailey A)
マスカットベリーAらしい甘さのある香りで、葡萄のほわんとした柔らかい甘さだけありエグミのような香りがない。酸味がきれいでそこに果実味の深みがある。旨味もあり、甘味はブランデーの風味を持つ。酸味がシャープ。

  
 
本日のラインナップ。ワイン12本、料理も沢山いただきました。ご馳走様でした。今回のワインとの相性はスパイスではっきりしているので評価の傾向はいつもよりも一致していたように見える。これに食材やその鮮度、調理法などと、ワインや料理に対する好みによってバラツキが出てくる。また、ワインと料理を合わせたときに、ワインの変化、料理の変化のどちらで見るかでも評価が変わる。どちらの味わいも損なわなければ3点、どちらか一方でもよくなれば4点、どちらか一方が悪くなれば2点などにするともう少し精度が上がるのかもしれない。

ワイン専門平野弥
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