2013年8月14日水曜日

日本酒とワインの比較試飲会 @平野弥

  
6月末に某所で伝統的な日本酒とは異なる新しいタイプの日本酒とワインを比較するというテーマで食事は洋食でそれぞれのマリアージュも楽しむという会があったそうです。そこでほとんどのタイプのチーズに相性が抜群に良く、こちらも味覚上はじめての体験をされたのがきっかけで開催された日本酒とワインの比較試飲会。

  
本日は聖酒造さん、榮万寿さん、萬乗醸造さんの3つの蔵元。萬乗醸造さんはワインのグランクリュに匹敵する世界観を持つ私の推薦。また、日本酒をテイスティングしてワインをアドリブで選んで比較する。この試飲会では日本酒側ではなく、ワインの嗜好や世界観で比較する。最初の料理はルッコラ入りタマゴサンド、鴨とアスパラと黒トリュフのカナッペ。

本日の日本酒リスト

聖酒造 @群馬県渋川市北橘町
関東の華 大吟醸(2000/720ml) ←大吟醸の方が純米吟醸よりも高い
関東の華 純米吟醸(1400/720ml)
関東の華 純米吟醸 生原酒(2600?/720ml)

清水屋酒造 @群馬県館林市台宿町
榮万寿 純米吟醸 (SAKAEMASU JYUNMAI GINJYO)2012(1890)
榮万寿 純米吟醸 (SAKAEMASU JYUNMAI GINJYO)2011 1 year old(2100)
榮万寿 純米吟醸 (SAKAEMASU JYUNMAIGINJYO)2010 2 years old(2100)

萬乗醸造 @愛知県名古屋市緑区大高町
醸し人九平次 彼の地(かのち)純米大吟醸 2012(3308/720ml)
醸し人九平次 別誂(べつあつらえ)純米大吟醸 EAU DU DESIR 2012 (3859/720ml)
醸し人九平次 彼の岸(ひのきし) 純米大吟醸 Domaine NEUF 2009(7350?/720ml)

  
  
蔵元で各3本でワインと比較する一巡目。

聖酒造 関東の華 大吟醸
果物、若いバナナ、スーッとする香り。舌にとろみ、クーンっと高いトーンの酸味が「ノ」の字型の膜形状のまま進む。これを単独で飲むと香り高く、味わいも酸味がきれいだが、他のを飲んでから戻るといわゆる日本酒っぽさが全面に出る。兵庫県産山田錦100%・米麹(国産米)・醸造アルコール、精米歩合40%

清水屋酒造 榮万寿 純米吟醸 (SAKAEMASU JYUNMAI GINJYO)2012
この蔵元のボトルやラベルがブルゴーニュのワインと雰囲気が同じ。少し黄を帯びていた色合い。バナナ、スーッとすっきりした香りで、スワリングすると酢酸系で香りの要素が高いセメダインが香る。舌にトロミがあり、花には抜けず舌にピリリと酸があり、戻香には熟れたバナナがある。すっきりした味わい。次の「彼の地」は大吟醸なのでかわいそうだが、そこから戻ると少し日本酒っぽさが出る。新潟県五百万石100%、精米歩合55%、日本酒度+8、酸度2.0、アルコール16度

萬乗醸造 醸し人九平次 彼の地(かのち)純米大吟醸 2012
香りは榮万寿の純米吟醸と同じ系統だが落ち着きのある香り。舌にとろみを持ち、グーンと沈み込みながらファーっと周囲に広がっていく。沈むのに重くない。余韻が異常に長くいつまでも続く。他には戻れない。山田錦100%、精米歩合40%、米麹(国産米)、アルコール16%、蔵元出荷2013年6月。裏ラベルには「彼の地-皆様を遙か彼方へお連れしたい、そんな思いを込めました。ラベルに記してある西暦2012はお米の収穫された年を指します。」とある。

・Cordier Pere et Fils Saint Veran En Faux 2011(コルディエ サン・ヴェラン アン・フォー) @Bourgogne,France
色々なフルーツのいい香り。フルーツに花、蜜がバランスよく加わる。口に含むと舌に蜜、上顎にクンっと酸味が立ち昇り、舌はすっきりしている。飲み頃になっており香りが魅力的で味わいもバランスがいい。榮万寿と同格。

  
  
二巡目。料理は揚げ茄子とトマトと茗荷、鱧とズッキーニのトマト煮、アスパラと生姜。きれいなお皿。

聖酒造 関東の華 純米吟醸
旨味のある香りで、スーッとする。トロミがあり酸味がピリリとする。旨味が豊富で1本目の大吟醸とは別物。これで大吟醸の方が高いというのは不思議。6月末の会でミョウガと香りが一体化した瞬間の鮮烈な印象を平野さんが受けた日本酒。ミョウガと合わせてみるとグワっとミョウガでも日本酒でもない黒く暗っぽい雲のような密度の塊がグッと出てきた。兵庫県産山田錦100%・米麹(国産米)、精米歩合50%、アルコール16度。

清水屋酒造 榮万寿 純米吟醸 (SAKAEMASU JYUNMAI GINJYO)2011 1 year old
少し黄を帯びていた色合い。香りの要素が凝縮し酢酸系のセメダインがグーッと立ち昇る香り。舌に甘味と酸味が落ち着きを持ち、トロミが出て3cmぐらいの球がグーンと口奥へと進む。コストパフォーマンスが高い。新潟県五百万石100%、精米歩合55%、日本酒度+5、酸度1.8、アルコール16度。

萬乗醸造 醸し人九平次 別誂(べつあつらえ)純米大吟醸 EAU DU DESIR 2012
スーッとした透き通ったいい香り。スワリングでフルーツのいい香りが立ち昇る。舌で果実の甘味と旨味が出てくる。彼の地を美しく洗練させた雰囲気。兵庫県産山田錦100%、精米歩合35%、アルコール16度、蔵元出荷2013年7月。ボトル表に記載のある「EAU DU DESIR」は希望の水と訳され、日本酒がもっともっと幸多きものとなる願いが込められているそうです。

・Domaine Ramonet Chasagne Montrachet 2010(ドメーヌ・ラモネ シャサーニュ・モンラッシェ)
クリームとコクのある栗のいい香り。酸味ときれいなトロミ、ファぁっとそよ風のように上顎方向へ味わいが立ち昇る。榮万寿の純米吟醸と同格。

  
白海老と枝豆のオムレツ。ワインも含めてどのお酒も合う。

  
  
三巡目。料理はタイ米を使った青のりのリゾット。香ばしく、オリーブオイルと合う。

聖酒造 関東の華 純米吟醸 生原酒
セメダインの香り。他を飲んでこの日本酒に戻るとアルコール感が強い。兵庫県産山田錦100%・米麹(国産米)、精米歩合50%、アルコール16度。

清水屋酒造 榮万寿 純米吟醸 (SAKAEMASU JYUNMAIGINJYO)2010 2 years old
白ワインのような薄めの黄が入った色合い。香りも味わいも複雑になる。口当たりも柔らか。新潟産五百万石100%、精米歩合55%、日本酒度+7、酸度1.8、アルコール16度。

萬乗醸造 醸し人九平次 彼の岸(ひのきし) 純米大吟醸 Domaine NEUF 2009
香りの要素がすごく多い。複雑でなのに澄んでいる。澄んだ旨味と酸味、舌中央に旨味が集中し、その余韻がとても長く、味わいの中盤から後半になるほどどんどん味わいが訴えてくる。トロミを持つがすっきりして、旨味もある相反するものを融合させた状態で、とにかく旨味が澄んだ状態でいつまでもずーっと続く。水ですごく薄めても甘味があっておいしい、まさに甘いお水。裏ラベルには「是非、ワイングラスにてお召し上がりください。温度の違いにて、様々な表情を見せます。お試しください」と書かれている。兵庫県産山田錦100%、米麹(国産米)、精米歩合35%、アルコール16度、蔵元出荷2013年6月。杜氏佐藤彰洋さんの作品。シュヴァリエ・モンラッシェ並みに旨味が続く(平野さん)

・Ramonet Chassagne Montrachet Premier Cru Boudriotte 2010(ラモネ サシャーニュ・モンラッシェ 1er ブードリオット)
いい香り。軽やかで柔らかくきれいに広がる。香りや味わいに品がありとてもおいしい。「彼の岸」と比較すると、ブードリオットは表面にパーンと透き通った香りが弾け、彼の岸はゆったりとして後半になるほど強くなっていく。味わいは彼の岸の方が複雑で特に余韻と世界観が違い、「彼の岸」を飲んでからこちらを飲むと余韻が短く要素も単調に思えてしまう。しかし、香りの要素はブードリオットの方が好みで、飲み比べで行き来出来るところは両方ともすごい。

  
高座豚のロースト、キタアカリのクミン炒め。高座豚は脂のうまみが特徴。キタアカリは甘い!
ワインは味が独立になる。関東の華はアルコール風味が強くなった。榮万寿はバッチリ合い、クンっと風味が立ち上がる。醸し人九平次は自然に合い、グーンと旨味が強調される。

  
差し入れの山本と黒龍。

山本合名会社 白瀑(しらたき) 純米吟醸 山本 生原酒 24BY @秋田県山本郡八峰町
山廃仕込みっぽい香りもある。酢酸系のセメダインも香る。口に含むと黒い弾丸がグンっときて、その後の余韻はすっきりとする。日本酒を普段から好んで飲む方に好かれそうな味わい。裏ラベルには「この商品は白瀑の醸造責任者である六代目蔵元の山本友文が精米から始まる酒造りの全ての工程に一貫して携わった、入魂の酒です。」と記載されている。自ら栽培した「酒こまち」を麹米に使用し、米(国産)・米麹(国産米)、精米歩合は麹50%、掛米55%、アルコール度数は16度、秋田交酵母No.12、2012年12月製造。

黒龍酒造 黒龍 しずく 大吟醸 [限定品](5250) @福井県吉田郡永平寺町
アルコール感が強い。水を感じる味わいで薄めの味わいで飲みやすい。よい焼酎を水で薄めたときの味わいに似た感じを受けた。他の方の意見によるとアルコール添加している中ではよい方だそうです。搾らずに自然に滴り落ちたお酒で、ワインだとフリーランに該当する。黒龍酒造さんのホームページだと5250円だがネット販売によっては倍ぐらいの値段が付いている。米・米麹・醸造アルコール、精米歩合35%、兵庫県東条産山田錦100%、蔵内酵母、2013年6月上製造。

 
流星群がきているということなので夜空を見上げたが真っ暗。残念ながら流れ星は見れなかった。

  
  
本日のラインナップ。9名で日本酒11本、ワイン3本の合計14本。

皆さんのコメントは、大吟醸以外はすべておいしかった。「榮万寿」は純米大吟醸あれば飲みたい(KDさん)。「関東の華」生原酒が一番よかった。「醸し人九平次」は作り過ぎている感じがする(OTさん)。ラモネは村名、1erともに負けている(MRさん)。日本酒でもグランクリュクラスということで興味を持ってきた。「醸し人九平次」の彼の地がおいしかった(KKさん)。日本酒は数十年ぶり。日本酒でも世界観がある。おもしろい(SGさん)。楽しかった。大吟醸を除くとおいしかった。榮万寿の1年がインパクトあった(MYさん)。普段から日本酒を多く飲んでいる。「関東の華」の生は日本酒らしく好き。「榮万寿」はもっと熟成したのを飲みたい。「醸し人九平次」はきれいに仕上がっている(MTさん)。「関東の華」が好み(平野さん)。
榮万寿は香りの傾向と雰囲気がワインを彷彿させるところがある。醸し人九平次はどれもよいが特徴が異なる。彼の地(かのち)は空間的な広がりを感じられ、別誂(べつあつらえ)は洗練された美しさと出で立ち、彼の岸は時空間の特にいつまでも続く時間の流れを感じされる。また、上のクラスになるほど洗練されて研ぎ澄まされた味わいになる。状態のよいワインと日本酒をこれだけ比較する機会を作るのは難しいので、とてもおもしろく有意義な比較試飲会だった。

ワイン専門平野弥
横浜市都筑区荏田南町4212-1 045-915-6767 13:00-19:00 月火休